トライアスロンのランが強くなる腹圧トレーニング
トライアスロン完走を目指す方で一番、取り組みやすいのがランニングです。ランニングは学校体育の授業でも必ず行っていますから、未経験の方はいないでしょう。
道具もランニングシューズさえあれば、場所も選ばずトレーニングすることができます。ただ、ハードルが低い分、自己流でラントレーニングをしている方が多いように感じます。
距離や時間を走るだけの自己流のラントレーニングは効率的ではありません。ランニングもスイムやバイクと同様に「技術種目」です。この視点をもっていることが、トライアスロンに特化したランニングトレーニングを行う上で絶対に必要です。
さて、まず「技術種目」であるランの具体的な技術について、何が重要になるか。つまり、ランニングのタイムを決める要因は何でしょう? それはピッチとストライドです。バイクでいうところの回転数とギアの重さを指します。
ピッチとストライドは、簡単にトップ選手の真似ができることでしょう。ただ、長続きしません。これに加えて必要なスキルが「エコノミー」です。いかに省エネルギー(=エコノミー)に優れて、長時間にわたって理想のピッチとストライドで走ることができるかがランニング技術なのです。
スイムやバイクと疲れきった状態で行うトライアスロンのランは、フレッシュな状態になるべく近い、省エネルギーで経済的な「エコノミー」で走ることができるかが重要です。トライアスロンに特化したラントレーニングとは、より「エコノミー」を追求した技術練習と言えるわけです。
「まずは正しく立つこと」
まず、「エコノミー」を追求する上で基本になるのが正しい姿勢です。これはスイムやバイクにも共通していえる事柄です。運動するときに最重要になってくるのが体幹部分。ここがしっかり安定していなければ、末端部分(手や脚)に効率良くパワーを繰り出すことはできません。
最初のトレーニングは、「正しく立つ」ことです。まず、平らな地面で肩幅程度に足を開き、耳、肩、膝、くるぶしが一直線になるように立ってみましょう。顎は自然に引き、踵を上げ下げしてみてください。
このとき、頭のてっぺんから宙に吊られているような感覚はありましたか?踵の上げ下げでバランスがとれない方は、猫背になっていませんか?
胸をひらいて背筋(せすじ)を伸ばしましょう。親指を外に向けると胸が開きやすくなります。踵を上げ下げして、バランスよく真上に上げ下げできていれば問題ありません。そのとき下腹部に力が入りやすくなっていることも確認しましょう。
「腹圧を確認する」
下腹部に力が入っているかどうかは、胴体が安定して力を発揮できる状態にあるかを確認する作業です。正しい姿勢で立ち、大きく深呼吸をしましょう。
まずは、胸式呼吸です。肺にたくさん吸い込んで、胸を膨らましましょう。そのとき、お腹は凹んでも大丈夫です。吸って吐いてを5回繰り返したら、腹式呼吸に移ります。
今度は下腹部に空気を溜め込むイメージでお腹を膨らませていきます。しっかり吸い込んだら、今度は膨らんだお腹を外側の腹筋でボールを潰すように凹ませていきます。最後はお腹と背中がくっつくくらいのイメージで行いましょう。
これを5回繰り返したら、お腹に力が入るようになっているはずです。お腹に空気を入れ込んで外側の腹筋に力が入っている状態を作ります。そして今度は、外側の腹筋で空気を締め出していくとき、胴体は安定して力を発揮できる状態になっています。これを腹圧といいます。
運動中は吸って吐いての連続ですが、この腹圧をキープした状態で泳ぎ、自転車を漕ぎ、走ることが大切になります。特に、最終種目になるランニングでは、すでに体が疲弊している状態で腹圧が抜けてしまって本来のパフォーマンスを出せなくなってしまいます。腹圧をキープした状態で呼吸するところからはじめ、そこに動作をつけていきましょう。息を止めてしまうのではなく、あくまで息を吐き切るのは腹圧を意識しやすくするためです。運動中は、腹圧が入ったまま、呼吸を止めないように。深い呼吸をしながら腹圧を高める技術はヨガに通じます。ジムにヨガのクラスがあれば、体験してみるといいですね。
疲労して腹圧が入りにくくなっている状態でも、修正をしながら腹圧をコントロールする力こそ、トライアスロンのランニングが強くなる近道です。
「まとめ」
トライアスリートは3種目に渡る練習でとても忙しいですが、こうした腹圧コントロールのスキルは3種目にわたってパフォーマンスにいい影響を及ぼします。特に、最終種目のランで腹圧コントロールができるようになると、フレッシュのランニングと、スイムバイクの後のランニングの差が少なくなります。トライアスロンのランが遅い人は、多くの場合、腹圧が抜けてしまっているのです。トライアスロンのランが強い選手を目指すには、腹圧コントロールのスキルを獲得すべきです。
byKD