マフェトン理論でトライアスロン
マフェトン理論という言葉を聞いたことがありますか?1997年に日本語版の本が出版され、脚光を浴びました。2000年前後には日本でもプロトライアスリートである藤原裕司さんが実践されて、メディアでも多く取り上げられました。私も実践を試みたのですが、当時20代前半で競技キャリアも浅く、すぐに心拍数が上がってしまい、決められた有酸素ゾーンでの運動がとくかくゆっくりで笑、我慢できずにやめてしまいました。ただ、その時に心拍数を基準にした運動強度を学ぶことで、その後の競技人生に大いに役立てることができました。
マフェトン理論とは
フィリップマフェトン氏の提唱するトレーニング方法で心拍数によって運動強度を区分しました。大きくわけて、有酸素運動(エアロビック)と無酸素運動(アネロビック)がありますが、マフェトン理論では、有酸素運動の比重を、無酸素運動よりも大きくとります。その割合は、有酸素運動85~90%以上、無酸素運動は10〜15%以下としています。明確には、無酸素運動の導入の仕方を明記していませんが、上記の配分に基づくと、一例として、週7時間運動している人は、24~36分の無酸素運動を週2回と記述されています。具体的には、20分Up+20分Down+(80秒無酸素+2分40秒有酸素)×5のインターバルトレーニング などが明記されています。
ただし、無酸素運動(スピード練習)は、エアロビックの基礎ができている人のみが対象であり、エアロビックベースができていない人は、練習時間の100%を有酸素運動に割り当てるべきとも書かれています。エアロビックベースを作るには、一般には3~4ヶ月かかるとされています。
180公式
マフェトン理論でのトレーニングの指標に、180公式なるものがあります。エアロビック内の最大心拍数を下記のように定め、マイナス10拍の間の強度で運動することを勧めています。
2年以上の間、順調にトレーニングができており、競技成績が伸びている場合
→180−年齢+5 40歳の場合には145拍 135〜145拍でのトレーニング
過去2年間、風邪を引いたのは1度か2度で、大きな問題もなくトレーニングできている場合
→180−年齢 40歳の場合には140拍 130〜140拍でのトレーニング
競技成績が伸び悩んでいて、よく風邪を引いたり、故障や怪我を繰り返している場合
→180−年齢−5 40歳の場合には135拍 125〜135拍でのトレーニング
病気にかかっていたり、治ったばかり、手術したばかり、退院したばかり、投薬中の場合
→180−年齢−10以上 40歳の場合には 〜130泊でのトレーニング
マフェトン理論を実践したプロトライアスリート藤原裕司氏
マフェトン理論では、アスリートの食事にも言及しています。炭水化物:蛋白質:脂肪を40:30:30に。また植物油などの不飽和脂肪を積極的にとり、加熱した油やマーガリンなどの摂取は極力避けるなど、かなりストイックな食事制限があります。また、ストレッチについては、過度な伸展から故障を招くと懸念しており、動的ストレッチでない静的ストレッチには否定的です。当時、マフェトン理論を実践してる選手からは、「自然界の動物、例えば猫などは、ストレッチしてから走らない」などの言葉も聞かれました。ナチュラル志向であるものの、私にとっては、不便さ、不自然さを感じたのを覚えています。
とはいえ、藤原氏のパフォーマンスは圧倒的でした。元来強い選手であったことは間違いないのですが、年齢を重ねてもフィットネスをキープしていて、40歳を越えても宮古島大会では表彰台の常連であり、表彰台を目指す若い選手にとっては、宮古島の番人、などと言われることも。マフェトン理論は、健康を損なわずに、運動機能を高めていくことに主眼を置いていますから、まさに体現者といえます。
オーバートレーニングのサイン
マフェトン理論の日本におけるアイコン的な選手だった藤原選手は、「脂肪を燃やすトレーニング 体験的マフェトン理論」を著しています。マフェトン理論の最大功績である心拍トレーニングのノウハウはもちろんなのですが、オーバートレーニングにおける身体の身体的なサインについても言及しています。個人的には、非常に役に立つ内容だったので、ここでも紹介いたします。(ここでは、藤原選手の身体的サインではなく、私のサインです。)
・頭皮がかゆい
・肌が荒れる
・口内炎ができる
・おならが多い
・とにかく眠い(特にご飯のあと)
・忘れ物が多くなる
・全てが億劫に感じる
・大好きなコーヒーが飲みたくない
・ビールが美味しくない
・下痢気味
改めて、リストアップしておくと、変化に気が付き易くなります。特にトライアスリートは、自分に厳しく真面目な性格の方が多いようです。仕事が立て込んでいたり、睡眠時間が少なくて回復が間に合っていないような中で、トレーニング計画を下方修正せずにいるとオーバートレーニングへ向かってしまいます。自分なりの身体のサインをリストアップしておくといいですよ!
まとめ
今ではトレーニングストレススコアという概念も生まれ、トレーニング強度をはかる指標が増えました。今の時代において、心拍トレーニングは、たくさんあるトレーニング理論のひとつですので、マフェトン理論だけに傾倒する選手も少ないと思います。ただ、心拍トレーニングを理解する上で非常に勉強になる理論であることは間違いありません。また、身体のサインを見逃さない、というアスリートとしての重要な資質にも着目しています。トレーニング理論に詳しい選手でも、身体が出しているサインについては、気がつかずにスルーしてしまっている選手も多く見られます。改めて、マフェトン理論を見直してみると新しい発見があるかもしれませんよ!
byKD