トライアスロンの熱中症対策
トライアスロンは競技の特性上(水泳競技があるため)気温の高い時期にレースが行なわれます。日本で開催されるトライアスロンは4月に石垣島トライアスロン、宮古島トライアスロンなど沖縄からスタートし、本州では5月からシーズンインして最後の大会は10月くらい。シーズンイン同様に1ヶ月遅れで沖縄の伊是名トライアスロンなどが11月に開催されてシーズンが終わります。トライアスロンは夏のスポーツと言えます。イメージとしては、ギラギラの太陽の下で、水を被りながらマッチョな選手たちが走っていくといったところでしょうか。暑さと同居しているトライアスロンで避けられないのが、熱中症だ。大会中に倒れて運ばれる選手もよく見られます。熱中症を知って、倒れないように対策を立てておきましょう。
熱中症とは
熱中症とは、高温や多湿の環境下で起こる身体の障害の総称のことです。気温が高い状態での運動が続くと、発汗による水分や塩分が流出します。いわゆる「脱水症状」による「熱けいれん」などを引き起こすのです。水分を取っていても、電解質(ナトリウム=塩分のこと)をとっていないと、「低ナトリウム症」や「水中毒」を引き起こし、最悪の場合には死に至ることも。
また高温に加え、湿度が高い場合には、汗が蒸発していきません。蒸発による気化熱で身体を冷やすことができずに、体に熱がこもったままの状態になって体温調節の機能が破綻してしまいます。これにより、倦怠、頭痛、めまい、意識障害などを引き起こして、パフォーマンス低下につながっていくのです。しかし、事前に対策方法を知っておくことで、熱中症を防ぐことができます。
トライアスロンの熱中症対策
熱中症が発生する要因には環境(気温湿度の高さ)に、選手自身のコンディション、運動の強度(ペース、時間)があり、ひとつでもバランスが崩れると熱中症となる可能性があります。特に、トライアスロンの大会では、レースによる興奮状態で、選手自身が、オーバーペースで走ってしまうこと、給水を忘れてしまうなどが主な原因として挙げられるでしょう。「水分をとっていれば大丈夫」は大きな間違いです。
①自分のペースを遵守する
レース中にライバル達に惑わされずに、自分のペースを守ること。これは非常に難しいことですが、特に暑いレースでは、さらに下方修正してペースを落とすことです。心拍計を使っている選手であれば、暑い時には心拍数もあがりやすいのがわかるでしょう。心拍数を守って勇気を出してペースを落としましょう。これは、筆者の経験則ですが、AT値を越えるペースに突入したあと、身体の中の熱はこもりやすくなります。越えて一度体温が上がってしまった場合には落とすのが困難です。ロングのレースでは、AT値を越えては走ることはないはずです。坂だったり、向かい風だったり、ライバルとの競り合いなどでペースを上げてしまいがちですが、自分のペースを守って体温を上げないようにしましょう。
②身体を冷やす
人間の身体は、発汗し、汗が乾くことによって気化熱を使って身体の熱を放出します。暑い日のレースでは、1時間に1リットル以上の汗をかく選手も珍しくありません。そのくらい水分を失っていきます。それでも、上昇した身体の熱を全て放出するには足りません。積極的に水を身体にかけて冷却していきます。トライアスロンの給水所には、必ず、スポーツドリンクと水が用意されています。給水せずとも、毎回、かけ水をして身体を冷却しましょう。いかに体温の上昇を抑えて、コンディションを維持するかが、よりよいパフォーマンスを発揮する鍵となります。エイドステーションに氷があれば、氷を頸部など動脈部に当てることで身体全体を冷やすことができます。股間に氷を入れて走るのも大真面目な対策です!
③給水を「電解質ととも」に、「定期的」に「適量」摂る
バイク中は風を切って走っているため、暑さを感じづらいもの。必ず、定期的に給水するクセをつけましょう。飲みたくなければ口に含んで吐き出せばOK。とにかく定期的に給水するクセが熱中症を予防することに繋がります。ランニングでも、必ず同様にエイドで水分をもらうこと。必要なくても口に含もう。しかし、暑いからとって水分を取りすぎてはいけません。人間が吸収できる水分量は、1時間に500ml程度。飲み過ぎると胃で消化吸収しきれずに滞留し、負担がかかってしまいます。吸収できない水分が胃で暴れてしまうのです。必ず少しずつ飲むこと。暑くても、たくさん飲んで身体が冷えることはありません。そして忘れてはいけないのが、電解質です。発汗によるナトリウムの流出は、低ナトリウム症を引き起こします。必ず電解質を含んだスポーツドリンクや、もしくはナトリウムのタブレットなどを摂ること。
レース前にできる対策
レース前日の飲酒は控えること。アルコールの分解には、水が必要です。飲酒した翌朝は体内水分が不足しています。数日前から、ウォーターローディングをしておくテクニックもあります。ウォーターローディングとは、レースの数日前から積極的に水分を摂っておき、常に身体の水分量を満たしておくテクニック。このときも、やはり電解質を含んだものを摂っておくこと。スポーツドリンクの場合には糖分が多いので、薄めて飲んでおくとよいでしょう。
レース当日の朝は、おしっこの色にも注目しよう。おしっこの色が透明であれば十分水分は身体の中にたまっているというサイン。逆に透明ではなく濃い黄色だった場合には水分が足りていないかもしれません。スタートまでの時間にも、積極的に水分補給を行なっておきましょう。
まとめ
上記の事柄を守っておけば、熱中症は事前に防げるはずです。とはいえ、暑い中の運動は内蔵に大きな負担をかけてしまいます。レースの気候は変えることができませんが、トレーニングでは、時間や場所などを変えて、より負担の少ない環境で行なうことをお勧めします。暑い中のトレーニングは効果が上がらず、回復にも時間がかかってしまうので。涼しい高地に移動したり、暑い時間を避けてトレーニングしていきましょう。
by KD