トライアスロンは体重移動を使ったピッチ走法で走る
トライアスロンのランニングは、日常生活にも「走る」動作があるように、三種目の中でも軽視されがち。しかし、実際には、ランニングは、脚への負担は体重の約3倍とも言われ、その衝撃は内臓にも伝わります。さらに、ランニングはスイム・バイクの後の最終種目。身体が疲労した状態でスタートするため、脚が痙攣したりトラブルも起きやすい種目です。スイム・バイク・ランの中でも一番、体に負担のかかる種目が最終種目というのが、トライアスロンの難しさでもありますね。従って、「どれだけ力を使わずに楽に走れるか」「無駄のない走りができるか」が大切です。
ストライド走法とピッチ走法
ランニングには、大きく二通りの走り方があります。歩幅の大きい「ストライド走法」と、歩幅の小さく回転の速い「ピッチ走法」です。「ストライド走法」は、歩幅を大きくとるため、筋力と腱によるバネをうまく使って走ります。その分、脚の回転が遅くなりがち。これに対して、「ピッチ走法」は脚の回転を重視するため、心肺機能に負担がかかります。また歩幅が小さくなりがち。理想は、「大きなストライドで回転の早いピッチを維持する」ですが、トライアスロンのランニングでは、どちらを重視したらよいのでしょうか。
前述のように、トライアスロンのランでは、身体への負担が少ない走法で走ることが大切です。筋肉は、心肺機能に比べて回復が遅く、ストライド走法によって筋力が疲弊してしまうと、パフォーマンスが低下してしまいます。トライアスロンでは、高心拍で走る競技ではないので、心肺機能を重視して走るピッチ走法が向いてると言えるでしょう。スプリントやオリンピックディスタンスのトライアスロンでは、スタミナよりスピードを重視する戦略も考えられます。その場合にはストライド走法も有効でしょう。ただ、それに耐え得る脚筋力が必要です。アイアンマンにおいても、すば抜けた脚筋力で小さい体で大きなストライドを武器に世界チャンピオンに輝いたミランダ・カーフレー選手のようなケースもありますが、あくまでエリート選手の稀なケース。一般的にはロングディスタンスのトライアスロンランでは、ピッチ走法が有効です。
ピッチ走法は、体重移動で走る
ピッチ走行を意識するには、まずは頭の位置、腰、足先の位置を意識します。下腹部に力を入れて、お腹を前の人にロープで引っ張られるようなイメージを作っていきます。脚から走り出すイメージではなく、お腹から走り出すことをイメージしていきます。重心はお腹の真下、そして、そこに足を着いていきます。親指の付け根(母指球)で着きます。
通常、まっすぐ立っているときの重心は、かかと付近にあります。この重心で走り出すと、後ろに重心が残っているため、膝が曲がり腰が後ろに残った状態になります。このような状態を、「腰が落ちている」といいます。このように腰が落ちている状態で走ると、足を前に出しにくく、体重移動を使ってのランニングができません。
もう一度、イメージしてください。走るときには、真っ直ぐ立つ状態から、かかとを少し浮かせて重心を母指球に移します。そして、下腹部に重心を移していきます。下腹部に重心が移動すると前に倒れてしまいそうになります。すると自然に片足が、下腹部の真下にくるでしょう。これを連続していくことで、走っていきます。足を前に出す、という感覚ではなく、自然に前に出ていく感覚です。これが体重移動を使ってのピッチ走法です。
前に着いた脚を後ろに強く蹴る必要はありません。ピッチ走法において、「蹴る」という動きは不必要です。「蹴る」という動きが強くなってしまうと、ふくらはぎやアキレス腱などに負担がかかってトラブルが起こりやすくなります。そのため、「蹴る」ではなく「脚が前に運ぶ」という意識をもつことが大切です。
まとめ
ピッチ走法にフォーカスして書きましたが、前述の通り、理想は「大きなストライド(歩幅)で早いピッチ」です。体重移動でのピッチ走法は、省エネルギーでトライアスロンのランニングに向いています。しかし、そればかりを追求していても頭打ちになります。体重移動での走り方をマスターしたら、その回転を維持して歩幅を大きくできるようにしていきましょう。
byKD