マッチ近藤真彦・安田大サーカス団長のトライアスロン世界選手権への挑戦
スポーツで素晴らしい成績を残した芸能人のニュースを耳にしたことがありませんか。例えば、リオオリンピックにカンボジア代表として出場した芸人の「猫ひろし」さんの活躍は記憶に新しいところです。トライアスロンにおいても世界選手権に出場した、もしくは出場を目指す芸能人が存在します。芸能人トライアスリートはどのように世界選手権に出場するのでしょうか。
トライアスロンにおける世界選手権
最高峰のスポーツの祭典といえばオリンピックです。トライアスロンにおいてもオリンピックは最も重要なレースのひとつとして考えられています。日本国内でも、オリンピックに向けて、才能に溢れた選手たちが、人生の全てを懸けて凌ぎを削っています。ここに芸能人アスリートが入り込む余地はないといえます。
オリンピックは4年に一度のビッグゲームですが、トライアスロンでは毎年、世界選手権が開催されています。シリーズ戦によるポイントで世界チャンピオンが決まるようになっていて、それはWTS(ワールド・トライアスロン・シリーズ)と言われています。シリーズ戦の指定大会は、世界各国で行なわれ、日本でも横浜大会が開催されています。
オリンピックやWTSの大会は競技性や魅せるレースを意識しているため、スイム1.5kmバイク40kmラン10kmのオリンピックディスタンスを基本距離として開催されています。その半分のスプリントディスタンス、さらに短いスーパースプリントなどさらに短いフォーマットの大会もあります。一方で、アイアンマンディスタンス(スイム3.8km・バイク・180.2km・ラン42.195km)は、トライアスロンの発祥ともされ、毎年ハワイのコナ島で世界選手権が行われています。
オリンピック・WTS・アイアンマンハワイ、この3レースがトライアスロンにおける世界選手権であり、最高峰の大会といえます。こうしたプロ選手の活躍する大会の一方で、一般愛好者の方も同じく大会に出場します。もちろん、プロとはスタートが別だったり、競技規則が異なったり(プロカテゴリーはショートの場合には原則ウェットスーツ禁止、ドラフティングOK)します。そうした一般愛好家のカテゴリーは「プロ(エリート)」に対して、「エイジ」と称されます。トライアスロンには「年代別」という概念が存在します。19歳以下、20‐24歳、25-29歳、このように5歳ごとに年齢が区切られます。その年齢のグループをエイジグループと呼びます。同じ年齢区分の中で、順位を争うわけです。
ニュースなどで「(芸能人が)トライアスロン世界選手権に出場!」という見出しがある場合には、このエイジグループでの世界選手権出場のことです。当然、トッププロ選手が出場する舞台ではなく、一般の方の中での世界選手権ということです。
エイジグループ世界選手権の種類
トライアスロンには設定された距離や、競技内容によって種類が異なります。第一ラン・バイク・第二ランで構成される「デュアスロン」やスイム・ランで構成される「アクアスロン」もトライアスロンの一種です。それぞれ世界選手権が開催され、プロ(エリート)の部と同時にエイジグループの世界選手権も開催されています。
「ロングディスタンス」世界選手権について
2015年にマッチこと「近藤真彦」さんは50−54歳男子のエイジグループで世界選手権に出場し注目を集めました。2015年日刊スポーツの取材に対しては「最下位の75位にならによう頑張る」とコメントを残しています。最終的な結果は出場選手72名中64位で、公言した目標を達成しています。
この大会ではスイム4km・バイク120km・ラン30kmが設定されていました。50−54歳男子のエイジグループの優勝タイムは5時間44分44秒。近藤さんのタイムは7時間36分05秒と僅差とは言い難いものです。つまりこの大会では出場する選手の中には大きな差があるのです。
では、「ロングディスタンストライアスロン」世界選手権の出場基準について紹介していきます。開催される年により若干の相違はありますが、2015年の近藤さんを例にとって紹介していきましょう。
出場基準① 前年度国内エイジポイントランキング10位以内であること
国内エイジポイントランキングは、各大会の上位選手にポイントを付与して年間のポインド合計数を競うものです。数名の上位選手にしかポイントは付与されないため、いくつものレースに出場しているからといって、ランキング上位にはなれません。この制度で10位以内に入ると確実に世界選手権に出場することができます。
出場基準② 指定トライアスロン大会で上位入賞すること
国内でも出場選手が多い人気の大会は、自然と出場選手のレベルも上がります。そのような大会で上位に入賞することは、決して容易なことではありません。この時点で、日本代表として出場することができる定員である20名の選出は終了してしまいます。しかし、正規の方法で出場する手段はまだ残されています。
出場基準③「ロングディスタンス」の完走実績があり特別推薦を受けた選手
ここには順位やタイムの規定はありません。推薦さえ受けることができれば出場資格を獲得できるのです。2015年に世界選手権に出場した近藤真彦さんはこの制度を利用し出場することができました。
ただし、3つの出場基準の優先順位は紹介した順番となります。出場基準②の時点で定員を超える選手が出場意志を表明したら出場することはできませんでした。しかし、プロ(エリート)と違って遠征費が自己負担のエイジグループでは、世界選手権の出場資格があっても、出場しない選手も多いのです。そのため、出場基準③での出場が可能になるのです。
特別推薦を受けるためには、初めに自己推薦をする必要があります。自分自身で出場した大会の成績とその他の必要事項を日本トライアスロン連合に提出すればOKです。実際にどのような基準で特別推薦が認められるかという基準は明らかにされていません。しかし、そもそも定員を満たしていない代表枠ですので、そこまで厳しい基準は設定されていないようです。
「スタンダードディスタンス」世界選手権の出場基準
「スタンダードディスタンス」世界選手権を目指す芸能人トライアスリートでは「安田大サーカスの団長」さんが有名です。クラウドファンディングを利用し資金を集め、目標達成に向けて精力的に活動しています。ここでも「ロングディスタンス」と類似した出場基準が設定されています。簡易化している出場基準を確認してみましょう。
出場基準① 前年度国内エイジポイントランキング10位以内であること
これに関しては「ロングディスタンス」とほとんど変わらない制度です。違いといえば、ポイントランキング対象大会の数が「スタンダードディスタンス」の方が圧倒的に多いことが挙げられます。ちなみに団長さんのエイジグループ(2017年現在)では、日本選手権などに出場経験がある選手がひしめく激戦年代となっています。
出場基準② 指定トライアスロン大会で上位入賞すること
前述しているように指定大会数が多いため、この時点で定員の20名を超えてしまいます。ここまでの権利保有者は50名を超える年代もあります。世界選手権に確実に出場するためには、出場基準①を満たすことが条件として考えられます。
出場基準③「スタンダードディスタンス」以上の完走実績があり特別推薦を受けた選手
ここも「ロングディスタンス」における制度と変わりはありません。出場基準②までに定員の20名さえ超えなければ、特別推薦で出場することも不可能ではありません。そして毎年20名の定員を超える年代は存在していないため、多くの選手に可能性が残されている状況にあります。
まとめ
芸能人トライアスリートによる世界選手権挑戦を例にとって、出場までの過程を紹介しました。芸能人だけでなく、多くの一般選手にも世界選手権出場の可能性がありますね。初心者であってもエイジグループの日本代表に選出される可能性は決して低くありません。挑戦してみようという気持ちを持つだけで、新しい世界が広がるかもしれません。ちなみに、アメリカやイギリスではエイジグループの世界選手権は200人規模(日本は100人規模です)で、選考も日本よりも厳しそうです。日本のエイジグループも徐々に盛り上がっていますから、挑戦するなら今のうちかもしれません。
byMKD