LSDトレーニング「ゆっくり走るだけで速くなる?」
LSDトレーニングとは、マラソンをやっている方なら耳にしたことがあるはず。日本人の国民性にあっているのか、多くの愛好者の方に広まっているマラソントレーニング方法です。LSDとはいったいどんなトレーニングなのでしょうか?
Long Slow Distance
LSDとは、Long「長く」Slow「ゆっくり」Distance「距離を走る」という言葉の略称です。その略の通り、ゆっくり長い距離を走るトレーニングです。ゆっくり長い距離を走ることで、ゆっくりと血液が循環していき、経路が拡張されていきます。人間は血液循環によって体中に酸素を送っています。低強度で長時間トレーニングすることで、毛細血管が発達し、体中のすみずみまで酸素が行き届くようになるという訳です。
また、毛細血管は老化により減少します。毛細血管が減れば、肌に十分な栄養を送り届けることができません。しかし、トレーニングで毛細血管を増やすと老化を防ぐことができるのです。高齢者でもスポーツをしている人が若々しく見えることはそのためです。
「ゆっくり走れば速くなる?」
ゆっくり長くの基準ですが、会話ができるくらいの強度で90分以上が目安となるでしょう。ゆっくりはできるだけゆっくりです。ロングジョッグとは違い、フォームもウォーキングに近いものになるでしょう。そしてLSDだけではなく、他のトレーニングの中に組み込むべきトレーニングです。一般的に、このあたりにLSD理論の誤解がありそうです。
「ゆっくり走れば速くなる」というソウル五輪代表の浅井えりこ選手を育てた佐々木功氏の名著がありますが、中上級者がLSDだけで速くなるということは述べていません。あくまで、LSDとは、「身体資源を開発する」という表現をしていますが、毛細血管の拡張など心拍機能の向上をして、コンディションを整えていくもので、整えた後には、短い距離のハードな練習なども取り入れていきます。この「ゆっくり走れば速くなる」というキャッチだけを切り取って、誤解しているランナーが多いのでなはないかと思います。
先にも言及しましたが、ゆっくりとは歩くより速い程度で、ロングジョッグとは目的が異なります。(ロングジョッグは、距離の克服などスタミナ養成やそれに応じた筋肉や腱の強化を期待したものです)LSDでは、ハードなトレーニングで硬くなった筋肉などをほぐすように体と対話しながら走ります。ゆっくり体を動かすことで、リカバリーさせていく、整えていきます。途中から体がほぐれて軽く感じられるようになっても、ペースを上げずに、力を溜め込むようにゆっくり走っていきましょう。力を爆発させるのは、次のハードなトレーニングやレースの時です。
トライアスロンでは
もちろん、このLSDの概念は、ランニング以外のバイクやスイムにも当てはまります。自転車の世界では、冬場のトレーニングとして古くからベース作りのためのロングライドとして取り入れられています。もちろん、ランニング同様、それだけでは速くなる訳ではなく、ここで獲得したベースの上にハードなトレーニングを重ねていきます。スイムでも、ゆっくり泳ぐことで毛細血管の拡張を期待できそうですが、選手のレベルによってはお勧めできません。なぜなら、上級者でもフォームを乱さずにゆっくり泳ぐことが難しいからです。トライアスロンは、3種目ありますから、毛細血管を拡張するベーストレーニングとしてのLSDは、バイクとランニングで行ったらいいと思いますよ!
by KD