トライアスロンの寒さ対策
トライアスロンと言えば「暑い」イメージですが、海外では「寒い」と感じるような大会もありますね。特に、最近では異常気象も多く、季節外れの寒さでレースが行われることも。そんな寒い時の対策を書いていきます。
ジバリングを防ぐ
まず、知っておきたいことは、極端な寒さでは、運動のパフォーマンスが低下するということです。人間の体は、36〜37度が平熱ですが、寒さにより体温が下がってくると、ガタガタと体を震わせて体温を保とうとします。これをジバリングと言います。体内温度を一定に保つために筋肉が勝手に収縮して熱をつくり出す反応です。エネルギー源としては糖質が使われ、しかもその発熱効率は低いので、レースの前に無駄なエネルギーを消費することになります。このように体が震えるような環境でレースを迎えない、しっかりと暖かい場所で待機する、適当なウエアを着ておくことが大事です。
また、トライアスロンの場合、最初の種目はスイムです。ウォーミングアップで入水した後に、ジバリングしてしまう方がとても多く見られます。ウォーミングアップで入水したら、スタートまでの時間で体を冷やさないように練習ウエアで入水して、水から上がったら本番のウエアに着替える、もしくはしっかりとバスタオルで水を拭き取る、などの工夫をしましょう。
ウエットスーツは防寒になる
本当に寒い日には、早めにウエットスーツを着てしまうのも作戦の一つです。ウエットスーツに早めに着替えて、しかし、足元はソックス、シューズを履いて筋温を下げないようにします。ウエットスーツになると、習慣で裸足になっている人も多いですが、足元から体温は奪われていきます。直前までソックスとシューズを履いておくといいですよ。どうしても、水辺にいることが多いので、シューソックスは濡れていいものを、そしてシューズも濡れていいものをスイムスタート地点に履いていきます。私は、サンダルでも、つま先部分が隠れるクロックスのようなサンダルにソックスを履いてスイムスタート地点に行くようにしています。
また、水温が極端に低い場合には、スイムキャップを二重にしましょう。あらかじめ、厚めのシリコンキャップを用意しておき、大会用のキャップの下にかぶっておきます。耳を隠せる人は隠しましょう。私は、耳を隠すと気持ち悪いので隠しませんが、末端から体温は奪われるので、スイムパフォーマンスに影響しない方は耳まで隠すといいでしょう。ウエットスーツ素材で作られた「スカルキャップ」というアイテムがあります。顎まで覆えるもので、温かそうに見えますが、NGです。なぜなら、ウエット素材のために浮力があるのです。頭を沈めて泳ぐことが難しくなります。頭の位置が上がってしまうとポディポジションは大きく変わります。よほど、ボディコントロールに自信のある方、またタイムより防寒と思っている方以外は、お勧めしません。厚めのシリコンキャップの二重被りでも寒さはさほど変わりません。
ホットバルムは身体を温めない
ホットバルムは、塗りすぎ注意です。スタートでは寒くても、トライアスロンの1日は長いもの。陽が出てから気温が上がっていくとホットバルムを塗りすぎたことを後悔することも。ホットバルムは、皮膚を刺激しているだけで、体温を上げてくれるものではありません。スタート前にホットバルムを塗ってポカポカしてきたからといってウォーミングアップを怠らないように。皮膚は熱い感覚になりますが、筋温は温まっていません。しっかりウォーミングアップで筋温を上げて、それでも寒さを感じて入水に不安があるようなら、末端をメインにホットバルムを使っていきましょう。
スイムアップ直後の低体温に注意
スイムアップ時に気をつけたいのが、低体温です。極端に低い水温の場合には、距離の短縮など主催者側の配慮があるはずですが、長時間低い水温の中で泳ぐと低体温になることがあります。スイムアップしてトランジッションエリアに駆けていく際に、平衡感覚が低下し、うまく走れないことがあります。その時には十分に気をつけて自転車に乗っていきます。かじかんだ手でお箸を扱えないのと同じことが起きています。ゆっくりと乗車し、いつもよりハンドリングに余裕を持って走っていきます。徐々に体が正常に戻っていくまで焦らずに。低体温で体のコントロールができずに、乗車時に落車する選手は非常に多いです。かくいう私も、何回も低体温による乗車時の落車を経験しています。いずれも、エリートレースだったために、集団を逃すまいと焦って正常時と同じ感覚で飛び乗ってしまったり、コーナーリングしたり、結果、ハンドルを持つ握力が足りずにふらついたり、ブレーキを握るタイミングが遅れたりして落車しました。バイクを持つ手がかじかんでいると大事故の可能性も。炊事用のゴム手袋のように防水性の手袋をトランジットで用意しておくのも有効です。いずれにせよ、スイムアップ直後は、パフォーマンスが低下している可能性がある、これを忘れないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?寒い大会は出たくないものですが、精神的なものも大きいようです。欧米人は日本人に比べて皮膚感覚が寒さに強いようです。寒いと感じる水温でも平気でウエットなしで泳いでますよね。これは人種の違いによるものですが、「寒い」と思い込んでしまうことはマイナスです。平然の泳いでいる欧米人をみて、「同じ人間とは思えない!」ではなく、「同じ人間だから私も平気だ!」と思うようにしましょう。でも、上記のような寒さ対策はしっかりと。私は過去に気温8度、水温14度の中でレースをしたことがあります。前述したように、低体温のまま乗車して最初の下り坂で落車してしまったのですが、あの体験をして以来、どこの大会に出ても、大して寒くないと思えるようになりました。精神的なものですね。たくさんの経験が人を寒さに強くします。できれば、冬の海練習なども取り入れてください。以外とウエットスーツを着ていれば寒くないものですよ!エクストリームな環境を楽しむ余裕を持ってトライアスロンに取り組んでくださいね。
by KD