ローラー練習の落とし穴、実走で速い選手になるために。
このXathlonでは、記事の多くでローラー台でのバイクトレーニングを推してますが、勘違いしてはいけません。ローラー台でのバイクトレーニングは、非常に効率的で安全でお勧めできるトレーニングですが、これが練習の全てではないのです。先日、熱心なローラートレーニング信者の選手と一緒に自転車に乗り、彼の乗り方とそしてパワーデータをみる機会がありました。想像以上に、ワットも出せるし、データ上ではトレーニング効果も非常に高い練習をしていたのですが・・・、ですが、速くないのです。なぜでしょうか?そして何を改善していったらいいのでしょうか?
速くない理由
最近では、SNSにパワーデータを公開する方も増えました。しかし、見ているとパワーデータが優秀でも「速くない選手」が多いように見受けます。速くない理由は、簡単です。パワーが出ているけど、スピードに繋がっていないからです。
回すペダリングでなく、踏む意識の強い選手にその傾向がみられます。重いギアを一生懸命に踏むために上半身が起きていませんか?(ローラー台でのトレーニングも上半身を起こしていませんか?ブラケットではなく、ハンドルバー手前を持ってトレーニングしていませんか?)上半身が起きれば、当然、空気抵抗も増えます。特にTTバイクに乗っている選手は、ローラートレーニングで上半身を起こして練習していいワットデータを出しても、実走に活きていません。ヒルクライマーなら、ハンドルバーを持って登るでしょうが、私たちはそうではありませんよね?ローラー台でもDHポジションでトレーニングする必要があります。
また、実走において、ふらついていませんか?ローラー台は、雑に踏んでもふらつきません。しかし、実走では、踏み方が雑だと右に左に自転車が傾いたりとふらついて走行します。真っ直ぐ走れないのでは速くは走れません。ペダルには、チェーンを引っ張る力だけを伝えたいのです。自転車を傾けてしまうようなペダリングが、力がチェーンを引っ張る以外の方向に伝わってしまっています。
意識を変える
パワートレーニングは、「いかに高いワットを出すか」、ではなく、「いかに低いワットで速く走るか」です。ローラー台の前に鏡を置いて、自分の投影面積を小さく、かつ出力しやすい場所を探しながらトレーニングしましょう。そのポジションでのインターバルなどのパワー管理をしたトレーニングをすればいいのです。人のパワー値を気にして、パワーを張り合うことは全くの無駄です。比較すべきは過去の自分です。
踏み方を意識するトレーニング
ローラー台では雑に踏んでもパワーは出るし、それがスピードに繋がっているかの確認はできません。従って、実走トレーニングは不可欠です。踏み方を意識できるドリルをいくつか紹介します。ローラー台で意識するなら、「SFR」を行います。なるべく大きなギアで40回転程度での2分程度のインターバルを3〜5本行う。また、60回転でじっくり20分〜60分テンポ走レベルで行うのも有効です。重いギアを低回転で回すことで、ペダリング効率の向上が狙えます。効率の良い踏み込み位置がわかりやすいのと、ゆっくり回すことで、ペダリング中に動員している筋肉を意識しやすいので真っ直ぐペダルに力を伝える練習になります。
実走でのドリルもいくつか紹介します。白線をゆっくりビックギアで走行します。もう歩くより遅い速度です。この時白線をはみ出ないように、ふらつかないように。ハンドルに手は添えるだけ、ハンドルでコントロールしようとするとふらつきます。上半身〜胴体で自転車支えてペダルを真下に踏まないとふらついてしまいます。ゆっくり走れなければ、速く走ることはできませんよ!
また、同じようにビッグギアにして置いてゼロ発進のトレーニングも有効です。チームメイトにサドルを持ってもらいビンディングをはめて、踏み込み位置にペダルをセットして構えます。よーい、GO!の合図で踏み込みダンシングして加速していきます。競輪のスタートのようにです。その際に、白線ははみ出さないように!自転車は真っ直ぐ、ただし上半身は振って構いません。
ビックギアトレーニングはオフシーズンに
以上、いかがでしょうか?重いギアでのトレーニングは膝回りに故障を誘発するリスクがあるので、高負荷トレーニングの前後には避けましょう。高回転トレーニングなどとセットで行うといいですね。高負荷でのトレーニングが多いシーズン中よりも、オフシーズン中のベーストレーニングの期間に取り入れるのがベターです。ワットチャンピオンではなく、真のチャンピオン目指して、何のためのパワートレーニングなのか、常に実走を、レースを意識したトレーニングを!
by KD