トライアスリートのゴール設定(年単位でトレーニング計画を立てる)
シーズンの計画を立てた熱心なxathlon読者の皆さん、できれば、もう一つ立てて欲しい計画があります。それは、年単位での計画です。何年かけてトライアスロン競技をやっていくか、最終的な目標をどこに置くか、そういった計画です。趣味で始めたトライアスロンだし、何年やるかわからない、自分がどこまでのレベルで競技する(したい)かわからない、という方はシーズン計画で十分です。ただ、いずれ、日本選手権に出場したい、アイアンマンハワイに出場したい、という方には必要な計画です。何年もかけて達成するような目標がある方は、ぜひ、参考にしてください。
4年単位、5年単位で考えていく
エイジカテゴリーという独特の制度があるトライアスロン。そのため、加齢に関係なく目標を設定することができますね。トライアスロン愛好者層は30代〜40代がピークで、以降は徐々に、年齢が上がれば上がるだけ、競技人口が減少していきますからライバルたちも少なくなっていきます。中には、今はアイアンマン世界選手権は夢のような話だけれども、30年後もアイアンマンを完走し続けることが目標、そうすれば70−74カテゴリーで世界選手権も夢じゃない、なんてことを話す方もいらっしゃいます。素晴らしい考え方ですね。皆さんにも、ぜひ長らく競技を続けていって欲しいなと思います。
さてさて、30年はちょっと長いお話ですので、現実的な目標設定の話に移りましょう。アイアンマンをチャレンジしている方ならエイジの切り替わる5年を一括りに、大学生や、ショートディスタンスなど最終的にオリンピックがある場合には4年を一括りに考えましょう。シーズン計画の時に書いたようにトレーニングには波があります。ハードにやる時期と緩める時期を繰り返し、体に負荷と休養を与えながら鍛えていきます。これは、年単位でも同じことが言えます。同じようにハードな生活を何年も繰り返すことはおすすめしません。なぜなら、体も疲弊するし、心も疲弊して、心身とも疲れてしまって結果的に長続きしないからです。オリンピックに出たい!と考えていても、トライアスロンを始めて1年でオリンピックには出場できません。どんなに才能があっても、段階を踏む必要があります。そして、その過程の中では、緩める年があってしかるべきなのです。
アイアンマンハワイを長期計画で狙う場合のプラン
まずは、到達したいレベルのリサーチからはじめます。アイアンマンハワイに出場が目標であれば、その年代で出場権を獲得した選手のタイムをリサーチしていきます。今、あなたが33歳だと仮定しましょう。トライアスロンはもう3年目。3年目でアイアンマンを初完走して、その魅力にとりつかれました。いつかは、アイアンマンハワイに出てみたい。現在のパフォーマンスは、スイム1時間20分、バイク6時間30分、ラン4時間30分。トータルタイムは12時間30分でした。
これに対して、30-34で権利を獲得するにはどのくらいのパフォーマンスが必要なのでしょうか。アジア圏でのレースで戦う方がコスト面でも、戦略的にも有利です。こうしたアジア圏の台湾、マレーシアに加えて、時差もなく、比較的移動距離の少ないケアンズも含めて、2017年のコナの出場権がどのくらいのタイムだったかを調べてみましょう。ここでは、ロールダウンの有無について把握できないので、割り当てられたスロットで一番遅いタイムを抽出しました。
2016 アイアンマン台湾(25スロット)2位タイム 10時間14分53秒
2016アイアンマンマレーシア(40スロット)4位タイム 9時間41分55秒
2017アイアンマンケアンズ(75スロット)5位タイム 9時間20分17秒
平均タイム 9時間45分
内訳は平均で慣らすと、スイム1時間、バイク5時間20分、ラン3時間20分、トランジション5分。
これを見ると、スイムで20分、バイクで1時間10分、ランニングで1時間10分の短縮が必要です。実際に、どのくらいのパフォーマンスアップが必要か出して行きましょう。スイムは現在のレベルは3.8kmが80分ですので100m2分06秒ペース。バイクは180kmで6時間30分、平均27.69km/hです。ランニングは4時間30分、1km5分41秒ペース。これに対して、目標は、スイム1分35秒ペース、バイクが33.75km/h、ランは1km4分44秒ペースです。
さて、目標と現実には大きな開きがありました。しかし、不可能なことなどないのです。33歳の今のあなたには届かない目標でも、1年間にスイムを100mで10秒、バイクの平均時速を1km/h、ランを1km10秒向上させれば、6年後には、越えられる目標になるのです。6年後、あなたは39歳になっていますから、35-39カテゴリーでの勝負になります。ちなみに、35−39の場合には、台湾で2位が10時間12分01秒、マレーシアでは5位で9時間58分37秒、ケアンズでは8位9時間27分38秒でした。平均は、9時間52分です。さらに言えば、40−44カテゴリーになれば、スロット数も増えタイムも遅くなります。私がコーチであれば、40歳の時にコナを狙えるように以下のような流れで指導します。ちょうど、あなたがトライアスロンを始めて10年目の大チャレンジ、10年計画です。
33歳 スイムスキルの向上 ウエイトトレーニングなど体の基礎づくり
34歳 ショート・70.3を中心にスピードを強化していく
35歳 アイアンマンディスタンスに向けてボリュームを上げていく
36歳 質量ともに最大 コナを意識したレースを!
37歳 ボリュームを落としたリラックスしたシーズン スキルの獲得と体の基礎作り
38歳 ショート・70.3を中心にスピードを強化していく
39歳 アイアンマンディスタンスに向けてボリュームを上げていく
40歳 質量ともに最大 コナ挑戦!
アイアンマンのような超長距離種目の場合には、フィットネスを向上させるのに時間がかかりますが、同時に動作の効率をよくすることで、より早く速くなります。この動作の効率=エコノミーを良くする作業は、スピードトレーニングによって得られることが多いのです。そのため、アイアンマンディスタンスに固執せず、年によっては、ショートや70.3を中心にレースを組むと効果的です。多くのアイアンマンアスリートが、エコノミーの改善、スピード強化を無視したまま、スタミナ練習だけを積み重ねています。一度獲得した動作は、失われることはありません。長期計画の中で、スタミナ(練習量)だけを追う年だけでなく、スキル、スピードに特化したシーズンを入れること、そして心身を緩めるシーズンを作り、メリハリをつけることが大切です。こうした長期計画は、自分自身ではなかなかプランニングできないもの。自分の得意で好きなレースに出たいですしね。経験のあるコーチに指導してもらうことをお勧めします。
by KD