トライアスリートの高地トレーニング
トップアスリートたちが行っている「高地トレーニング」。日本では特にマラソン選手が行うことで有名です。「高地トレーニング」とは、一体どのようなもので、果たしてトライアスロンにも有効なのでしょうか?そして、一般エイジトライアスリートにも有効なのでしょうか?
高地トレーニングとは、文字通り標高の高い場所を使ってトレーニングをする手法です。標高が高くなると、空気が薄くなるのは皆さん想像しやすいかと思います。空気が薄い状態でのトレーニングをしたり、生活をすると、体がよりたくさんの空気を体内に取り込もうと、標高に順応しようとするのです。具体的には、血液のデータが変化していきます。細かい内容は割愛しますが、要するに血液の酸素運搬能力が向上するということです。
そして結論を先に言うと、トライアスロンにも間違いなく有効なトレーニング手法です。高地トレーニングのメッカでもあるアメリカのボウルダーには、トップトライアスリートが多数トレーニングしています。標高が高いとプールがなかったり、自転車を漕ぐには道が急峻すぎたり、雪が残っていたりと条件が限られてしまう中で、ボウルダーは、スイムバイクランの環境が良いため、たくさんのアスリートが集まっています。
ボウルダーに行って合宿できれば問題ないですが、一般エイジアスリートには厳しいですよね。エイジアスリートができる方法はないか?もう少し、この高地トレーニングの特性を知っておきましょう。
まず、血液変化の起こる「高地」の定義です。一般的には効果があるのが1500〜3000mとされています。ここで、トレーニングする、または生活をすることで、血液の酸素運搬能力の向上が期待できるのです。
「トレーニング、または生活する」、と書いたのには理由があります。高地にてレーニングも生活もする「トレーニングハイ・リビングハイ」、高地に滞在しながら、トレーニング時には下山する「トレーニングロウ・リビングハイ」、トレーニング時にのみ高地で行う「トレーニングハイ・リビングロウ」の手法があります。
高地トレーニングの期間ですが、トッププロたちは3〜6週間を目安に長期トレーニングを組みますが、一般エイジの場合には、3泊〜1週間くらいの合宿でも十分に効果を得られると思います。私も都内で仕事を持っていたので、長期の休みは確保できず、短期の高地トレーニングを行なっていました。私の感覚では2泊でも十分に効果があります。金曜日の仕事を早めに切り上げて高地へ移動、高地にて金土に2泊、日曜の午後に下山でも十分です。
高地では、酸素が薄いため、回復が遅くなります。個人差がありますが、睡眠の質も低下します。コンディショニングの難しさがあるので、個人での経験値を積み重ねてトレーニング強度など調整する必要があるでしょう。酸素摂取量が減るため、激しく追い込んでも、筋力的には追い込みきれない側面があります。そのため、強度の低いベース練習を中心にするのが無難でしょう。
肝心のトレーニング効果ですが、下山して平所での空気に慣れてしまうと血液の状態も元に戻ってしまいます。その効果は1週間ほど。できればレース直前に下山するのがいいと思いますが、高地でのトレーニングからの回復を考えると1週間前の下山くらいでもいいかもしれません。お仕事のあるエイジアスリートなら、1週間前の金〜日で高地に滞在&トレーニングでいいと思います。
もちろん、血液の状態が元に戻る、と書きましたが、ゼロに戻ってしまうわけではなく、こうしたトレーニングで繰り返すことで、血液の状態(基本数値が)は向上していきますし、高地順応のスピードも早くなっていきます。繰り返すことで経験も増えるので、強度コントロールも上手になっていくでしょう。
以上は、短期でのトレーニングハイ・リビングハイの高地トレーニングの手法でしたが、トレーニングハイ・リビングロウの手法であれば、もっと簡単に取り組むことができます。それについては、また次回に!
by KD