トライアスリートのメンタルトレーニングとは?
みなさんは「メンタルトレーニング」と聞いて、何を思い浮かべますか? リラクセーション、ポジティブ思考、イメージトレーニング、瞑想、座禅、験担ぎ(げんかつぎ)など、やり方はさまざまですが、メンタルトレーニングの最大の目的は、気持ちや考え方を上手にコントロールして、「心」を良い状態に保ち、パフォーマンスの質を最大限に高めることです。 トライアスロンでは、体が極限状態になっている中で、いかにパフォーマンスを引き出せるかで大きく結果が変わってきますよね。「心が折れた」「諦めて歩いてしまった」「緊張してスイムでブイで立ち止まってしまった」よく聞く話ですが、泳力も実力もあるのに力を発揮できない…それは「心」の状態でなかったからでしょう。
目指すべき「心の状態」とは
パフォーマンスを引き出せる「良い心」の状態とは、どんなものでしょうか?・・・リラックスしている、集中している、ワクワクしている、・・・答えは、1つではありません。 競技に対する目標が違えば、目指すべきメンタル状態も違ってきます。 一流の選手として、本気でトップになろうとしている人にとって、闘争心や「絶対に勝ちたい!」という強い思い(勝利意欲)は欠かせません。 「自己ベストを更新したい」というように、これまでの自分を基準に目標設定をしている人は、周囲に惑わされず、自分のペースを保つための、集中力や冷静さが大切になってきます。 「コース上の美しい景色や気持ちの良い風、地元の方々とのふれあいを楽しみたい」と思っている人なら、記録や順位を心配しながら臨むよりも、ワクワクした気持ちでスタートラインに立つ方が、レースをより満喫できるかもしれません。
同じトライアスロンでも、その楽しみ方は人それぞれで、その人の目標や性格に合った理想のメンタル状態というものがあるのです。
メンタルトレーニングは、トップアスリートだけのものではありません。 「せっかくたくさんの時間やエネルギーを注ぐのだから、それまでに頑張った成果は最大限に発揮したい。」 「1度しかないこのレースを、最高の気分で思い切り楽しみたい。」 そういう気持ちがあれば、どんなトライアスリートにも役立つものなのです。
メンタルトレーニングは習慣にせよ
さて、そんなそれぞれの目標に適した目指すべき「良い心」のメンタル状態を、自分自身で本番で作り出せるようにトレーニングするのがメンタルトレーニングです。そのメンタルトレーニングは、いつ行うものなのでしょうか? たとえば、どうしても良い結果を出したい大切な試合があって、その試合に向けてメンタルトレーニングを取り入れるとしたら…?
答えは、「メンタルトレーニングで、解決したい課題や達成したい目標ができたときから」です。 早すぎることは、まずありません。 そのくらい、メンタルトレーニングの効果が出るまでには時間が必要なのです。日々の習慣で身につけてこそ、本番で「良い心」の状態を保てるのです。付け焼き刃のトレーニングでは好結果は望めません。メンタルもフィジカルと同じ。トレーニングによって鍛えられます。そして、強くなるには時間がかかるのです。コツコツ、じっくりの繰り返し…フィジカルトレーニングと全く一緒です。
直前にメンタルトレーニング本を読んでも効果は…??
これは、実際にあった部活での経験談です。日頃からメンタルトレーニングをする習慣のないチームでは、「試合の直前になって、急にメンタルトレーニングを意識し始める」というようなことも少なくありません。
「みんな、今日まででできる練習はやったのだから、あとはメンタルを鍛えるだけだ。 メンタルトレーニングの本を持ってきたから、明後日の試合で勝ちたいと思ったら、これを読むように!」そう言って上級生が持ってきた本には「なるほど!」と思うようなポジティブな考え方や、トップアスリートの名言がたくさん載っていました。部員たちは、興味深く読んでいましたが、結果は…劇的な変化は感じられませんでした。
確かに、たとえ試合の直前だったとしても、やらないよりはやった方が良いかもしれません。 「自分はメンタルトレーニングをやったのだ」という安心感や自信が、プラスに働くこともあるでしょう。 しかし、メンタルトレーニングで本当に競技力を高めようとしたら、「ついで」や「最後の仕上げ」 として取り入れるだけでは足りません。直前では到底間に合わないのです。
さらに言うと、「本を読んで知識を身につける」だけでは、自分自身のスキルとしては定着しません。 レースの前日に、それまでやってこなかったウェイトトレーニングを急にやり始めても、翌日に成果を上げることは難しいでしょう。 「上手な泳ぎ方を知っている」だけでは、そのフォームで泳げるようにはなりません。 メンタルトレーニングでも、新しいスキルを取り入れて、それを意識しなくても自然にできるくらいまでにマスターするためには、普段のトレーニングや日常生活の中で、繰り返し実践していくことが必要なのです。
次の記事では毎日すべきトレーニング実例を紹介してきますね。